1939年時点でアメリカ陸軍に配備されていた装甲車両は約400両であったが、その殆どがM2軽戦車であり、現代戦に耐えうる性能を持つと考えられていたM2中戦車は僅か18両にすぎなかった。戦間期にアメリカ軍が戦車設計に投入した資金は僅かなものであり、この時点では実戦的な新型モデルを生産する為のノウハウも経験も持ち合わせていなかったのである。
前型機であるM2中戦車は37mm砲、機関銃8挺という貧弱な火力に加え車高も高く、当時生産されていた多くの戦車と同程度の性能だった。ところがナチス・ドイツのフランス侵攻作戦において世界的にも最新鋭のスペックを誇るⅢ号中戦車及びⅣ号中戦車が多大な貢献を果たしたことが広く知れ渡ると、アメリカ軍において大口径の砲塔を備えた強力な戦車の需要が高まった。
クライスラー社は戦車の設計を請け負ったが、当時のアメリカにおいては75mm砲を搭載できる回転砲塔を生産する技術がなかったために代替策として車体に主砲を備え付け、上部の回転砲塔には37mm砲を搭載した戦車を生産することが決定された。このモデルはＭ3中戦車となる。そして回転砲塔の技術整備が完了し75mm砲を装備できるようになった後に開発されたのが後継機となるM4中戦車であった。