前期に作られていた車体には、水冷ガソリンエンジンが採用されていたが、後期からは空冷ディーゼルエンジンに変更された。
エンジンの違いだけではなく、前期と後期では車体そのものも大きく異なっていた。日本軍が徹底いて機密を保持していたため、諸外国は後期89式中戦車を、前期の89式とは全く別物であると勘違いして新型の94式中戦車であると認識していた。
熱帯地域での戦闘を想定して車体が設計されており、断熱材として、戦車室と砲塔には石綿が内側に塗られていた。戦闘室と機関室は壁で区切られており、その間には両方の部屋をつなぐ連絡扉があった。乗員はこの連絡扉を使って機関室にいき、エンジンや各機器の整備・調整を行った。
機関室の右壁には、エンジンの冷却と換気を行うための小さな窓がついており、射撃をする際には、一酸化炭素中毒対策として、その窓や他の窓を開けて換気をしていた。
また、車体側面の飛び出している箇所には水タンクが設置されており、水冷ガソリンエンジンの冷却水の予備としていた他、乗組員の飲料水としても活用された。